こんにちは!UIデザイナーのおまめ(@omame_creator)です🙌
みなさんは使いにくいサービスに出会って、ちょっと頑張って使ってみたけど最終的に諦めて別のサービスを探し始めちゃうこととかありませんか?
いざなんで使いにくいのか聞かれると、なかなか言語化するのは難しかったりしますよね。
そういったUIの「なぜ」を言語化し、ロジカルに評価できるようになれば、よりユーザビリティを高めるための改善提案ができるようになると思うんです。
そのためには、認知コスト・学習コストをどのように定量化するかというお話と、学習コストをできるだけ上げないように意識してUIを制作するのが大切になってきます。今回はそれらのヒントについてお話ししてきます!
目次
学習の3段階
人がサービスの使い方を完全習得するまでには、認知→学習→習得という3つのステップがあり、その一つひとつのステップの中に、「コスト」と呼ばれる完全習得するまでに立ち塞がる障壁があります。
認知フェーズの障壁
こちらは初回使用時に、ユーザーがサービスで達成したいゴールやタスクを完了する難易度のことです。上記のグラフでは、2回目以降の学習コストが同じ場合の、初回の認知コストの差を表現しています。
例えば、Wordpressの記事を投稿する作業の工程があまりにも多いとか、難しすぎると初回のタスクを完了せずに離脱してしまう可能性もあります。
これは前回の記事で整理した「認知コスト」と言われるもので、こちらを定量化する方法は前回の記事を参照してみてください!
学習フェーズの障壁
こちらはユーザーがサービスを使い始めて2回目以降、ユーザーがサービス内で達成したいタスクを効率的に行うために何回繰り返す必要があるか、1回やるごとにどれだけ熟練度が上がるのかということを表したグラフで、学習フェーズの障壁といわれるものです。
上記グラフでは、初回の認知コストが同じ場合、2回目以降の学習コストの差を表しており、学習コストが低い例では、3回目で熟練度が一定に到達し、そのまま再現性を持って同じタスクを完了することができますが、学習コストが高い場合は、何度やっても迷いながら進めてしまうので熟練度が上がりづらい状態を表しています。
サービスを始める時は一度もみたことがないのでわからないことも、2回目以降は慣れてきて、だんだん同じタスクを完了するスピードが速くなったりしますよね! これが今回取り上げる「学習コスト」と言い、コストが低ければ早い段階で熟練度を上げることができ、コストが高ければ何度やっても迷って、タスクを完了するのに時間がかかってしまいます。
完全習得・熟練された状態
使用方法を完全習得した後です。ユーザーがそのサービスを使い続けるかどうかは、ユーザーにとって高い生産性をサービスが提供できてるかどうかに関わってきます。
使い方がすぐにわかって、タスクを完了するのに慣れても、やり方がわかっても、サービスを使う前と使った後で生産性があまりなく、他の手段でも代替え可能であれば、使いたいと思わないかもしれません。
「認知フェーズ」「学習フェーズ」「完全習得」の3つの段階は最終的に、下の図のようにフェーズごとの学習曲線で表現することができます。
曲線の下がり幅が極端なのか緩やかなのか、飽和状態に達するまでにかかる時間はどれくらいなのかを考えることで、ユーザーがサービスの使い方の完全習得にどれだけ早く到達するかが見えてきます。
このように数値化して測れると、よりロジカルにUIを改善できます。
次の章からは、このグラフを作れるようになるために、ユーザビリティ評価をする具体的な方法について解説していきます!
学習コストを定量化するユーザビリティテストのやり方
今回は、学習コストを数値化して比較することをユーザビリティテストで実験した論文を元に解説していきます。
前提として、人が初めて見るインターフェースをどれだけ簡単に習得できるかを実験したいので、テストするシステムを使用した経験がほぼない参加者を30-40人集めています。
単純なタスクを調査する場合は参加者が少なくてもいいのですが、少し複雑なタスクを調査する場合、データの変動性を説明するためにより多くの参加者が必要になります。
ここからどのように調査して学習コストを定量化するのか、4つのステップに分けて解説していきます!
ステップ1 : 測定基準の決定
前提として、学ぶ力の法則に基づき、主な指標としてタスクの時間を収集していると想定します。学ぶ力の法則とは、タスクを繰り返す回数に応じて、完了するのにかかる時間が減少するというものです。
タスクの時間が関係ないシステムのテストをする場合は、別の測定基準が必要になります。この場合は、特定のタスクでユーザーが犯したエラーの数を収集するのが一般的です。
ステップ2 : トライアルの回数を決める
タスクの時間を収集する頻度を決定します。ここでは1回1回のテストをトライアルと呼びます。タスクの時間を、時間の変化に伴い記録するので、同じ参加者に同じタスクを複数回完了させる必要があります。タスクを完了するのにかかる時間が変わらなくなる飽和点に達するまで、トライアルを繰り返します。
平らな曲線は、参加者がシステム (このタスクの部分のみ) を可能な限り学習したことを表しています。試行回数はシステムの複雑さによって変動します。開始点として、5 -10 回のトライアルを検討しますが、それでもまだタスクを完了する時間が変動する場合は追加します。
試験の間隔については、ユーザーがシステムを使用すると予想される頻度を考慮し、その間隔を可能な限り一致させると効果的です。
たとえば、ユーザーが毎日または週に数回実行するタスクの場合、連続した日にトライアルを実行したほうが実際と同じ状況で調査することができます。一か月に1 回実行されるタスクの場合は、試行の間に4週間を空けることをお勧めします。
ステップ3 : データを集めてグラフを作成する
タスクごとに、各トライアルでかかった時間の平均を計算し、ラベル付きの軸を持つ折れ線グラフに点を打っていきます。その点をつなげると、そのタスクの学習曲線を作ることができます。
複数のタスクでテストしたい場合は、タスクをランダム化して、結果にバイアスがかからないように注意します。ユーザーは1つのタスクから得た知識を別のタスクにも適用します。タスクのランダム化は、この影響を軽減するのに役立ちます。
ステップ4 : グラフの曲線を分析する
定量化すると同時に、データの有意性を分析する必要があります。
つまり、トライアルの効果が実際に有意であったかどうか、学習曲線の中でかかった時間の低下が実際のものなのか、それともデータのノイズの結果なのかを調査する必要があります。
複数のデータが得られた場合、全てのデータの母平均が等しいといえるか否かを明らかにする解析手法である「一元配置分散分析」を使います。
トライアルの効果が有意であることが判明したら、全体像を考えてみましょう
学習曲線の傾きはどのくらいか
- 学習コストが高く、学習しにくいインターフェースは、曲線の落ち込みが比較的小さく、飽和点に達するまでに多くのトライアルが必要です。
- 学習コストが低く、すぐに学習可能なシステムの曲線は急勾配で急速に低下し、数回の繰り返しで飽和点に達します。
- 同じポイントに到達するのに 30 回トライアルが必要な場合は、学習可能性が低すぎる可能性があります。
最終的な効率も考慮する
ユーザーがタスクの実行方法を完全習得して慣れた後でも、タスクを完了するまでに時間が10 分かかることは許容できるでしょうか?
それは競合製品の数による場合があるので、競合分析を行う必要があります。
競合分析が実行できない場合は、調査結果をコストと費用対効果と比較します。管理者が最適な方法でバックアップタスクを完了するために1日10分を費やし、そのタスクを1年間毎日実行すると、これは3650分または約60時間になります。
1 時間あたり100ドルのコストで、会社はバックアップを完了するために6000ドルを費やすことになります。その量が許容できるか、設計を改善して、コストを下げる必要があるかは、各製品の仕様によって異なります。
結論
製品の学習コストを数値化することは、ユーザーがその製品で最適な行動(飽和点)にどれだけ早く到達するかを示しています。
比較的頻繁に使用される UI の学習コストをを測定することは重要です。調査方法は、同じ参加者が同じタスクを完了することを繰り返し測定します。
結果は、ユーザーがタスクを効率的に完了するために何回繰り返す必要があるかを明らかにする学習曲線によって可視化することができます。
学習コストを最小化する
定量化するやり方がわかったので、最後に、学習コストを下げてユーザビリティの高いUIをつくるにはどうすればよいのか。3つのヒントを紹介します。
1. オンボーディング・チュートリアルを表示する
新規でサービスを使い始めるユーザーに対して、オンボーディングでサービスの世界観、何ができるのかを説明すると、その後のタスクを達成するゴールイメージを持たせることができます。
また、使い方がわかりずらい箇所にチュートリアルを表示させることによって、初回のタスクを達成する際に、ユーザーが迷わずゴールに到達する手助けをすることができます。加えて、使い方を忘れてしまっても、チュートリアルをいつでも見れる場所におくことで、何度でもユーザーの助けになることができます。
2. ツールチップを表示する
アイコンだけでユーザーが迷ってしまうUIに対しては、ツールチップを表示するようにしましょう。そうすることで、ユーザーが迷いなく操作できます。
3. トライアンドエラーができるUIを意識する
一度失敗すると戻れないUIにしてしまうと、ユーザーの学習する機会を奪ってしまいます。
間違えてもすぐ戻れる、削除できる、また、削除したものをすぐ戻すことができるnotification barを置くなど、トライアンドエラーをしやすいUIを意識しましょう。
まとめ
今日は学習コストをどのように定量化するかというお話と、学習コストを最小限にしたUIを制作するプロセスについてお伝えしました。
ただUIを制作するだけでなく、ユーザー目線でどれだけ使いやすいものになっているか言語化するために、学習コストを定量化するユーザビリティ評価はかなり効果的で、その後の改善に役立つものです。
今回説明した内容をもとに、ぜひ学習コストを定量化し、ユーザビリティの高いUIを作成してみてください。
ここまでみてくださりありがとうございました!