大きな文字だけでは不十分…対象ユーザーがお年寄りの場合のUIデザインで意識しておく6つのこと

kikawa mizuki

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UIデザイナー

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この記事は約12分で読めます。

こんにちは!mizuki(@kikapyon)です。

多くの国では、65歳以上の人口が増加しており、そのほとんどはネットを使用しています。

多くの年配の方がデジタルプロダクトを使用しているのにサポートができていないのはもったいないですよね。

現状のUIデザインでは、多くの問題があります。そこで「デザインで何か支援ができないか?」と思い、お年寄りに向けた効果的なアクセシビリティデザインやUI設計を調べました。

誰にでも分かりやすいデザインを目指せる内容になっています。ぜひ最後までご覧ください。

なぜ年配のユーザーに合わせたデザインが必要なのか

高齢者のネットの使い方

  • パソコン教室で、一緒に学ぶ仲間と交流したり、初心者に教えたりすることが生きがいになる
  • イラストや音楽、俳句などの作品を発表しあい、意見交換することが自己実現につながる
  • カメラを利用したり、画像などを送ったりして、家族や友人と電話や手紙よりも充実したコミュニケーションができる
  • 趣味に関するウェブサイトを利用して、最新情報の収集、同じような仲間と情報交換、関連商品の購入などができ、趣味の世界を広げ、充実させることができる
    (現状では、高齢者に人気のある趣味に関するサイトが少ない、調査例では、写真、お菓子作り、ガーデニング、俳句(川柳)編み物などの趣味に利用されている)
  • 地方部などで、地元の商店で手に入りにくい商品を、インターネットで購入する
  • 季節の素材を使った料理や高齢者向きの食材や調理法のレシピを検索する

高齢者も私たちと同じように、ニュースを読んで、お金を管理し、買い物をし、流行りのトピックを調べ、友人や家族と連絡を取り合っています。実際に、より良い生活を送るためにインターネットは役に立ったというコメントも多くあるようです。ある人は、「インターネットを使えるようになったことで、より自立した気分になった」と話しています。

近年、人は長生きするようになり、高齢になっても活動的であり続けています。ピュー研究所が実施した調査によると、2019年には65歳以上の人々の73%がインターネットを使用していました。

令和3年度の調査で分かるように、日本国内でも驚くほど多くの高齢者ユーザーがいます。

合計
60〜64歳89.1%90.5%87.8%
65〜69歳80.0%82.6%77.5%
70〜79歳59.4%65.8%53.9%
80歳以上27.6%37.5%21.9%
(参考)65歳以上でまとめた利用率53.4%62.1%46.7%
(参考)75歳以上でまとめた利用率36.0%45.8%29.5%
(参考)国民全体の利用率82.9%86.3%79.8%

しかし聴覚、視力、手先の器用さは、年齢とともに低下していきます。身体的な障壁としては、25歳から60歳の間でWebサイトを使用する能力が年0.8%低下することが中年ユーザーを対象としたテストで分かりました。また、65歳以上のユーザーは21〜55歳のユーザーに比べてWebサイトの使用速度が約半分になります。ですが、多くのデジタルプロダクトはこれらの変化するニーズに応えることができていません。

アクセスしにくいデザインは、高齢者だけでなくすべての年齢層のユーザーにストレスを与えます。若いユーザーでさえストレスを感じてしまうデザインは、年配のユーザーに対する実質的な障壁です。

よって高齢のユーザーによりよく対応できるようにUI設計を変更する必要があると言えます。

困りごとの具体例

そもそもどんな課題に直面しているのでしょうか。実際に高齢者がデジタルプロダクトを使用しているときに困っていることの例を挙げていきます。

馴染みのない専門用語

「ウェブサイトとウェブページの違いがわからない」

「URLの意味は?ホームページはウェブサイトの一部なのか分からない」

「戦時中のアルファベットが習えない時期に育った人々は特にローマ字入力に苦労している。アルファベットの大文字・小文字の区別も難しく、例えばgはメガネみたいな形と言って教えている」

「パソコンの操作に関する本を読むにしても、横文字が多いから、単語の意味から調べることになる。ブログ、インターネット、ダウンロードなど、全然分からなかった」

「アプリケーションのヘルプで調べようとするが、適当な単語を入れることができず『該当するものがありません』というメッセージが返ってくる」

分かりにくいUI

「還暦のお祝いとして、夫からデジカメをもらった。とてもうれしくて、たくさんの写真を撮ったのだが、”フォーマット”という機能を勘違いしており、撮り貯めたデータを誤って消してしまったことがある。貴重な写真も入っていたので大変ショックだった」

「よくインターネットで「同意しますか」と求められる文章が出てくるが、理解ができないから何でも『はい』と押してしまう」

高齢者ならではの悩み

「触ると壊れそう」

「パソコンを使い始めた当初はうまく行かないことが多く、分からないことがあったら画面を閉じて諦めるというやり方だった」

「パソコンやOSが新しくなるほど、いろいろな機能がついている。しかし講習では、手順の一部しか教えられない。例えば年賀状を作成できるようになっても、名刺はできない。仕組みは同じだが機能が複雑なため、受講者側からすると一から覚えることになってしまう」

「パソコン講習会に参加した高齢者は、習ったことを忘れないようにするため、受講後に自宅で復習することが多い。しかし、講習でできたことも、自宅でひとりでやろうとするとうまくいかないことがある」

「用語が分からないのですぐに機能や手順が分からなくなってしまう。前に調べてあったものでも、それが思い出せず、2回、3回と同じことをしてしまう」

「しばらく疑問を放っておくと、疑問だったこと自体を忘れてしまう」

改善していくために

若者によって若者向けに設計されたサイトやアプリは、多くの場合年配のユーザーが快適に使用することはできません。多くの問題を抱えている現状の高齢者向けUIを改善していくための6つのポイントをご紹介していきます。

気をつけたい6つのポイント

  1. 適切な文字の大きさや音の大きさ
    人間の老化は、20歳になると始まります。40代のユーザーはすでに視力が十分に低下しており、20代のデザイナーよりも多少大きなフォントサイズや音のボリュームを必要としています。
    デフォルトのサイズは12pt以上に設定し、それぞれ個人で調整可能だと好ましいです。
    フォントサイズの選定について気になる方はこちらもどうぞ!
    【関連記事】デジタルプロダクトで読みやすいフォントサイズを模索する4つの方法
  2. コントラスト比の基準をクリアした色設定
    モバイルアプリのインターフェーステキストは、高齢者が快適に読むには色が薄すぎたりすることがよくあります。ロービジョンユーザーには特に過集中させることなくコントラスト比を高く保つことが必要です。
    【関連記事】【初心者向け】デジタルプロダクトにおける最適なコントラスト比を考えよう
  3. 要素あるいはタッチ可能領域の調節
    年配の方は若い方に比べて細かい作業が苦手です。
    ボタン、ドロップダウン、リンクなどのインタラクティブな要素は、年配のユーザーがクリックしたりタップしたりしにくい小さなサイズでデザインされていることがよくあります。
    【関連記事】押しにくいボタンデザインとはおさらば!ユーザーの動きとターゲット要素の最適化
  4. Web用語、横文字用語の流用
    Webの使い方に関する正式なトレーニングを受けた高齢者は25%しかおらず、残りは独学でした。このため、彼らは公式のWebまたはブラウザー関連の用語に慣れていません。高齢のユーザーにとっては、意味の分からない言葉だらけなため、用語のわかりやすさへの配慮をおすすめします。より易しい表現へ変更するか、イメージ図を添えることによって理解をサポートしましょう。
    さらに一般的に使用されている英語のWeb用語は、普段から馴染みがないので、日本のユーザーにとって理解しにくいものです。
  5. 覚えやすく、忘れにくいようなデザイン(ヘルプ機能の充実、読みやすくわかりやすいマニュアルなど)
    表示と操作の関係などが学習しなくとも理解できるような自然な感覚に沿っているとよいです。
    さらに、高齢者はエラーメッセージを読むのに問題を抱えています。これは、エラー画面の言葉遣いがあいまいまたは不正確であったか、画面上のメッセージの配置が他のデザイン要素の中で見過ごされやすかったためです。高齢者がエラー処理に遭遇した場合、シンプルさが通常よりもさらに重要になります。エラーに焦点を当て明確に説明し、できるだけ簡単に修正できるようにします。
  1. 入出力機能の高度化・多様化(音声認識、手書き入力など)
    ボタンやキーボードを使用しない入出力機能は場合によってはより簡易的にプロダクトを使用することができます。

おわりに

高齢者は、ウェブサイトやアプリが自分のニーズや興味を考慮して設計されていないと感じていることがよくあります。あるお年寄りのユーザーは、オンラインの世界が自分とはまったく違う人を念頭に置いて作成されたため、「取り残されている」と感じたと話しました。

限られた人を想定したデザインではなく、できるだけ障害者老若男女ユーザーに合わせたデザインが必要だと感じます。


参考文献

https://www.nngroup.com/articles/usability-seniors-improvements/ 「Usability for Senior Citizens: Improved, But Still Lacking」

https://www.nngroup.com/articles/define-techy-words-old-users/ 「Define Techy Terms for Older Users」

https://www.nngroup.com/articles/usability-for-senior-citizens/ 「Usability for Seniors: Challenges and Changes」

https://www.soumu.go.jp/mainsosiki/johotsusin/bfree/pdf/usability3_00.pdf 「高齢者のユーザビリティに配慮したICT 利活用環境に関する指針」

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